今回のフランスとギリシアの選挙において、両国の国民は緊縮財政による「耐乏」政策に対して、「ノー!」という選択をしました。これにより、欧州債務問題が再び懸念され、投資家は2月以降のリスクオンの状態から再びリスクオフに陥りました。株価は再び低迷しています。
フランスの新しい大統領オーランド氏は、「言葉巧み」に国民の支持を得て、僅差で選挙に勝利しました。彼が用いたトリックは、あたかも「緊縮財政による耐乏生活か?成長による回復か?」フランスはこのどちらかを選択可能である、という仮想の状況に支持者たちを誘いこみ、「そうだ、成長を選択しよう!」と呼びかけました。現実は、フランスには選択の余地などありません。成長できないから、現在の問題を抱えているのですから。
ところで、幾何学の問題に、Squarying the circle、円積問題があります。ある円と同じ面積をもつ正方形を定規とコンパスを用いて有限の回数で作図しなさい、という問題です。この答えは、不可能、ということです(円周率が超越数であるという理由によります)。
1992年以降、不況のもとで国の支出を増やして、道路や鉄道などのインフラ投資をして成長による経済再生を狙った日本はこれに失敗しました。その結果は膨大な借金が残り、「問題」は何も改善されませんでした。「日本人は愚かだ」と海外の識者はみています。
ドイツは、欧州の債務危機を、緊縮財政によって解決しようとしました。たとえば、ギリシアに支出の削減を求め、また、増税を求めました。これはギリシアだけでなくEU全体においても同様です。
最近、ドイツはこの考え方を修正しているようにみえます。不況下において政府支出を削減することは、ほとんど不可能だからです。イギリスの「鉄の女」は小さな政府をめざして行政改革を断行しました(その日本版が特殊法人改革。昔の特殊法人は今では独立行政法人。英国ではAgency)。しかし、彼女の在任期間に政府の支出は5.5%増加しました。鉄の女の行政改革をもってしても支出削減はできなかったのです。
いったん、保護としての給金や補助金を与えると、これは既得権化してしまいます。既得権を打破することは非常に難しい。私はある自治体の公的住宅問題の相談を受けたことがあります。その相談とは、生活保護のための公的住宅に住むことが既得権化して、「相続」の対象となっているというものでした。親の生活保護を子供が引き継ぐ、という驚くべき内容の相談でした。そのために、本当に保護が必要な弱者が困っているという問題でした。
不況下の緊縮財政のうち、増税よりも支出削減が望ましいとエコノミストは言いますが、上記で述べたように、それは困難です。
増税は経済停滞を招くのが一般です。そうなると、結果的に、増税によって失業者が増え、失業手当のための政府支出が増えるので増税による収入増がネットではゼロになる、あるいはかえって、支出が増えるという可能性もあります。
円積問題は解くのが不可能な問題です。しかし、政治家はこれを解ける問題として国民に提示します。その結果、国の収入よりも大きな支出がなされます。特に、ギリシア、イタリア、スペイン、日本といった国は、1978年以降、ほとんどの年で、支出が収入を上回る状態を続けてきました。
さてと、今日の仕事にもどりましょう。ヨーロッパの債務危機は、円積問題のようなものです。短期的な解決策はありません。時間をかけて・・・悪化を食い止める・・・そんな努力を・・・長期的に・・・、ということですね。


by 川口有一郎
中国不動産2012春